運動学習の知識を活かす 神経リハビリテーション実践**協同医書出版社/川崎 翼/978-4-7639-1097-4/9784763910974**
発行 2025年5月
判型:B5判 320頁
ISBN 978-4-7639-1097-4
編著:川崎 翼
著:秋月 千典 / 金 起徹 / 鈴木 博人 / 濵田 裕幸 / 林田 一輝 / 福本 悠樹 / 松本 侑也
★第60回 日本理学療法学術研修大会(2025年 東京)の書籍販売において、売り上げ第1位に輝きました
運動学習研究は「人が動きを学ぶことの本質を理解することの探求」であり、「人が運動を学ぶことは、自己に可能性を与えること」である。
これは、運動学習について日々学び、研究や臨床を通して思考を深めている本書の著者たちの考えです。このような観点をもって、リハビリテーションにおける運動学習についての知識を基礎から体系的にまとめ、臨床での活かし方を提示しています。
理学療法士や作業療法士にとって「運動学習」はなじみのある言葉ですが、養成教育のなかで体系的に学ぶ機会はほとんどありません。本書は、リハビリテーションの観点から運動学習について網羅的・体系的にまとめ、臨床での課題設定や介入方法を提示し、具体的な症例を通して実際の運用でのポイントを示しています。
効果的なリハビリテーションは、その人にとって最適な学習課題と学習環境をいかに整えられるかにかかっています。そのためには身体面だけでなく精神・心理的な側面など多岐にわたる要因を考慮する必要があります。それらを「運動学習」という視点で貫くことで、これまで個別に学んできたさまざまな知識がつながり整理されてきます。そこから、日々の臨床において、多要因を考慮したうえで新たな神経回路をリハビリテーションによっていかに効果的に再構築し、最終的な運動(パフォーマンス)の質を上げるかという探求へつなげていきます。
運動学習の知識を学び、リハビリテーションの実践に活かすことを第一としてまとめられた本書は、「運動学習」についてきちんと学びたい理学療法士・作業療法士にとって最適なテキストです。
【目 次】
第1部 運動学習を理解するための「基盤的知識」
第1章 運動学習に関する基礎知識
1.1 「人が動きを学ぶこと」の本質について
1.2 まずは運動学習の定義から
1.3 運動制御と運動学習の関係を整理する
1.4 運動パフォーマンスの分類を知る
1.5 運動学習の種類を知る
1.6 運動学習過程を知る
1.7 運動学習段階を把握する
1.8 リハビリテーション対象者と健常人の運動学習の違いが重要
1.9 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント1 リハビリテーション科学とスポーツ心理学における運動学習の捉え方~類似点と相違点
第2章 運動学習に関する諸理論
2.1 コンパレータモデル~運動制御のスタンダードモデル
2.2 Adamsの閉ループ理論(closed-loop theory)とは
2.3 Schmidtのスキーマ理論(schema theory)とは
2.4 生態学的理論~個体と環境の相互作用という視点
2.5 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント2 自由エネルギー原理に基づく運動制御と運動学習
第3章 運動学習に関わる感覚運動的側面
3.1 運動的側面から運動学習を考える
3.2 感覚的側面から運動学習を考える
3.3 身体意識と運動学習の接点を考える
3.4 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント3 有酸素運動と運動学習
第4章 運動学習に影響を与える精神・心理的要因
4.1 動機づけは運動学習にどう影響するか
4.2 セルフマネジメントは運動学習にどう影響する
4.3 目標設定は運動学習にどう影響するか
4.4 自己効力感は運動学習にどう影響するか
4.5 認知機能は運動学習にどう影響するか
4.6 精神・心理的な変調は運動学習にどう影響するか
4.7 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント4 運動学習に関する文献の見つけ方と読み方
第5章 運動学習の神経基盤
5.1 運動学習の種類とその脳内機構を知る
5.2 運動学習の方略とその脳内機構を知る
5.3 運動学習過程によって脳内機構は変化する
5.4 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント5 運動学習研究のテーマの設定方法
インターバル “反復なき反復”~運動学習の理解のためのさらなる視点
第2部 運動学習を促進するための「課題設計と各種介入手法」
第6章 運動学習課題の設計と教示1:運動課題実施前
6.1 課題の分割という視点:全体法と部分法
6.2 練習計画:練習の変動性と課題配置
6.3 課題設計時に考慮すべき変数
6.4 練習量と練習密度という視点
6.5 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント6 睡眠と運動学習
第7章 運動学習課題の設計と教示2:運動課題実施中~実施後
7.1 言語の利用という視点
7.2 注意の焦点化
7.3 フィードバック
7.4 能動運動と受動運動
7.5 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント7 運動イメージを利用した運動学習初期の学習効率向上に向けた一工夫
第8章 運動学習を促進する介入のエビデンス
8.1 課題指向型トレーニングによる介入のエビデンス
8.2 CI療法による介入のエビデンス
8.3 ロボット技術を用いた介入のエビデンス
8.4 機能的電気刺激を用いた介入のエビデンス
8.5 運動イメージや運動観察を用いた介入のエビデンス
8.6 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント8 運動イメージ戦略と運動学習効果
第9章 運動学習を促進しうる非侵襲的なニューロテクノロジー
9.1 運動学習に寄与するニューロテクノロジー
9.2 非侵襲的脳刺激法(NIBS)によるニューロモジュレーション
9.3 非侵襲的磁気刺激によるニューロモジュレーション
9.4 非侵襲的電気刺激によるニューロモジュレーション
9.5 その他の非侵襲的手法によるニューロモジュレーション
9.6 テクノロジーを駆使したリハビリテーション
9.7 本章のまとめと取り組むべき課題
サプリメント9 運動学習課題の設定方法
第3部 運動学習に関する知識を活かした神経リハビリテーション実践
第10章 運動学習に関する知識の活かし方
10.1 運動学習に関する知識の活かし方:総論
10.2 脳卒中者に対する運動学習の知識の活かし方の要点
10.3 パーキンソン病者に対する運動学習の知識の活かし方の要点
10.4 運動器疼痛者に対する運動学習の知識の活かし方の要点
サプリメント10 発達・老化と運動学習
第11章 運動学習に関する知識を活かした介入の実際─症例紹介─
11.1 脳卒中① 認知的介入により障害物跨ぎ動作の改善を認めた軽度脳卒中症例
11.2 脳卒中② エラーレス学習を用いた介入により座位保持の安定性が向上した重度脳卒中症例
11.3 パーキンソン病① 重心移動の運動学習~外的焦点化を用いた感覚再重み付けの試み
11.4 パーキンソン病② すくみ足に対する運動学習~メンタルクロノメトリー評価に着目して
11.5 運動器疾患① 人工膝関節全置換術後症例stiff knee gaitに対する歩容修正~身体知覚異常に着目して
11.6 運動器疾患② 集団リハビリへの移行によって運動恐怖感が軽減し、歩行・立ち上がりの速度が改善した慢性疼痛者