臨床が変わる!画像・病理対比へのいざない 「肝臓」**金芳堂/大村 卓味/9784765318105**
発行 2020年3月
サイズ B5 / 260p
ISBN 978-4-7653-1810-5
内容紹介:多くの知識と経験を積んだスタッフが集結し、20年超に及ぶ臨床症例をもとに、画像と病理の対比を試みたテキストブック!単なる診断名の当てっこだけでない、所見と診断名の照合で終わらせず、病変の拡がりや進展度、組織型や予後まで推測し、疾患の本態に迫ることこそが画像診断の本質である。様々な病理組織、臨床画像を見ながら、病理医と直接ディスカッションしている気分を味わおう。本書を読み終えたら、あなたの診断力も向上しているはず。深みのある診断学を身につけよう。目次:はじめに 直感で「検査」をしていたあなたへ1.HCCはなぜHCCぽく見える?2.腹部画像研究会CHAPTER1 シェーマで学ぼう肝細胞癌1.シェーマで学ぼう肝細胞癌2.HCCの多段階発癌3.肉眼形態はとても大事4.HCCの造影理論CHAPTER2 病理に出づらい血管腫1.リアス式マージナルストロング2.血液プールのサイズはさまざまCHAPTER3 転移性肝癌の「当たり前」と「盲点」1.知られざる壊死の世界2.転移巣は原発巣に似るCHAPTER4 対比のための基礎理論1.音響工学の基礎2.知って得する“アーチファクト”のいろいろ3.装置の設定、選別、プリセットについて4.脂肪=高エコー?5.造影超音波と造影CT/MRIが合わないのはなぜ?CHAPTER5 腹部画像研究会、見参(ありふれた病変のありふれていない所見)1.ちょっとヘンな肝細胞癌2.ちょっとヘンな血管腫3.ちょっとヘンな転移4.転移かどうか悩ましい小結節CHAPTER6 腹部画像研究会、奮闘(レアな病変を渾身対比)1.肝内胆管癌(intrahepatic cholangiocarcinoma:ICC)2.細胆管細胞癌(cholangiolocellular carcinoma:CoCC) 3.限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia:FNH)4.肝細胞腺腫(hepatocellular adenoma:HCA) 5.血管筋脂肪腫(angiomyolipoma:AML)6.いわゆる炎症性偽腫瘍(inflammatory pseudotumor:IPT)7.類洞拡張症8.エキノコックス序:再校ゲラの索引項目に蛍光ペンを引き終えた今、本書をあらためて俯瞰する。気になることがひとつ。各章ごとに執筆者として冠されている名前に、病理医の名前がやたら目立つ、ということ。「おかしいな、手に取ったのは画像の本だったはずなのに」と少し不安になる方もいらっしゃるかもしれない。自分で書いておいてアレだけれど、私自身も不安だ。大丈夫なのか。マッチポンプ的に言い訳させて頂くと、あくまで骨組みとなる「文章」を書いたのが市原であった、というだけだ。実際には、すべての章が多くの医師・放射線技師の力を結集して作られた。だから安心してほしい。この本はちゃんと立派に画像の本である。なお、もし校正作業がDropbox上で展開されていなかったら、おそらく郵便費用だけで印税の何割かが消滅しただろう、それくらいの暴力的なやりとりが毎日くり返された。クラウドがなかったらと思うと冷や汗が出る。言うまでもないことだが、本書の豊富な臨床画像を選び症例を厳選したのはフラジャイルないち病理医ではない。超音波、CT、MRI、あらゆるモダリティの画像写真が、ラジエーションハウスの俊英たちによって選び抜かれた。画像の読みについては、歴代の「腹部画像研究会(後述)」に出席した数え切れないほどの読影者たちの思考を元にしつつ、研究会を長年見守り育ててきた大村医師をはじめとする優れた指導者たちによって何重にも校正されている。私は彼らの成果を聞いてまとめたにすぎない。すなわち本書における私は、インタビュアーやウェブライターのような存在であり、進行係、ナレーター、狂言廻しであった。付け加えるならば私が担当した作業はとてもラクだった。何せみんながよってたかって私に画像の読み方を教えてくれる。講演で用いたプレゼンを惜しげもなく提供してくれる。おまけに、彼らが日常的に抱えているライトな疑問からマニアックでニッチな難問まで、多数のクリニカル・クエスチョンを私に投げかけてくれる。これらを組み直すだけで一冊の本ができた。まあ組み直している間中、Dropboxはあたかも炎上しているかのごとくに編集がくり返されていたのだけれど……。それにつけても金芳堂の諸氏のご苦労が忍ばれる。症例ごとに組み合わせが異なる臨床画像、色合いひとつで雰囲気が変わってしまう病理マクロ画像、サイズが毎回異なるプレパラート画像などを適切に配置し、フォントのカタチや色合いにまでこだわって「腹部画像研究会(後述)」の足跡をこれほど美しくまとめあげてくださった。担当編集の藤森氏ほか皆様にこの場を借りて厚く御礼を申し上げたい。さて、他の教科書の序文にだいたいどういうことが書いてあるのだろうかとカンニングしながらナントカ紙幅は埋まった。とりあえず本書の真髄である「病理診断を確定診断として使うのではなく、最も優れた画像モダリティのひとつとして相対化し、臨床と病理とを逐一対比しながらひとつの病態を解き明かそうとすること」については「はじめに」以降にしっかり書いてあるのだからもう書くことがない。いい本ですよ。みんなで書いたんだもの。2020年1月 市原真